By:スウェーデン在住 大瀧昌之
スウェーデンの情報といっても、それこそ福祉や医療に関するものから、歴史とか文化とか暮らしに関するものまでいろいろあります。
ネットで、読者がどんなものを検索するかというものを見てみると、スウェーデンに関するものは圧倒的に福祉や医療に関するもの、あるいは税金とか…
大概は、スウェーデンという国に対して一般的に持たれているイメージによるもので、それらのイメージに対しては相当数の情報が得られるようです。
でも、「普通の暮らしはどうなの?」という面から見ると、まだまだ日本には知られてない情報もたくさんあるようですね…。
そこで、このサイトではそんな「あまり知られてないもの」で、かつ「これがスウェーデンだ!」というような情報もお伝えしようと思います。
まずは、「暮らしに欠かせない、スウェーデンの風土」と言える「フィーカ」について…です。
フィーカ(Fika)というのは、スウェーデン人の生活に欠かせないもののひとつです。
簡単に言えばコーヒーを飲むことなんですけど、そう単純でもない…。
日本的には「お茶を飲む」みたいなもんですし、一人で飲むときには単に「コーヒーを飲む」って感じですけど、「フィーカ」する時は、同僚とか友人とか家族なんかと一緒に飲むんで、社会的なことなんですよね。
それと、フィーカはスウェーデンの生活慣習というか、休憩の時間でもあるし、仕事や何かをしている時に何かの理由で「ブレイク」する切れ目でもあるし…
「この人と、もう少し親密になりたい」と思えば、「デートでないデート」としての意味を持つとか…ある意味、社会的な機能を持つ習慣なんです。
このフィーカ(Fika)という言葉はもともとスウェーデン語にはなかったんですが、この語源がどのように来たかにはいろんな説もあります。
スウェーデンの言語のエキスパートであるラーシュ・グンナル・アンダーションによれば…
コーヒーを飲むことをフィーカというのが定着したのは1910年と言ってますから、今から110年ほど前に出来た俗語だということです。
スウェーデン語でコーヒーはKaffe(カッフェ)と言いますから、カッフェの音節が逆になるとすればフェッカになるはずですけど…
Kaffe(カッフェ)というのが英語のCoffeeから来たとすれば、発音的にはコーフィーになるんで、kaffeをkaffiとも言っていたそうです。
Kaffiの逆音節とすればFikka、つまりFikaになる。
で、このフィーカには、甘い焼き菓子が付きもので、特にシナモンロールってお菓子とのコンビネーションが最もポピュラーですね。
このシナモンロールは、スェーデンでは一般的に「カッフェブッレ」(コーヒー菓子)と呼ばれていますが、スウェーデンが発祥だと言われています。
イースト入りのパン生地を伸ばして、表面にバターを塗って、シナモン、砂糖を振りかけてロール状に巻いた、甘いお菓子です。
「スウェーデンのテーブル」という本の著者へレーネ・ヘンダーソンによると、
「客に無礼とならないためには、最低3種類の焼き菓子が必要であり、客を感心させるには、7種類の焼きたての焼き菓子を用意して、天気の話ができるようにしておく」というそうですが、
日本の茶道とは違って、そんな儀式的な意味はないんですが、やっぱり「その道」を徹底しようとする人はどこにもいるんですね…
でも、確かに複数の人が来訪する場合は、いくつものお菓子が並んでいるのが普通です。
「フィーカ」というのは「コーヒーを飲む」とか「コーヒーを飲みに行く」という動詞的な言葉ですが、
フィーク(Fik)というと、これも俗語ですが、「喫茶店」とか「コーヒーショップ」という意味にもなります。
こんなコーヒーショップに行かないまでも、スウェーデン人は、それこそ家庭でも、仕事でも…どこでもフィーカします。
家族で、森の中でピクニックしたり…
森でキノコ狩りの合間に、休んだり…
職場でのミーティングであったり…
庭園でフィーカするのも、趣があるもんです。
フィーカにはお菓子が付きものですが、そのほかにオープンサンドやちょっとした軽食と一緒にフィーカというのも普通です。
ちなみにですけど、僕のお気に入りは、エビのオープンサンドと…ちょっと小腹が空いている時は、それに菓子をプラスするやつ…
セムロルというお菓子は季節ものですが、そのセムロルが解禁の時期になると、店にいっぱい並びます。
最近は、コンビニで「フィーカ」を無料サービスするところも出てきました。
無料ですからね…
こうなると、もう社会的とか交流とかは関係なく…単なるコーヒー依存症の人へのサービスみたいなもんですけど、
スウェーデンも、フィンランドに次いで世界で最大のコーヒー消費国の一つですから、これだけ普及するとコーヒー依存症も増えるのかも…
この次は、世界のコーヒー消費大国ということで、スウェーデンのコーヒー文化についても紹介するつもりです。
お楽しみに…!