男らしさと、女らしさ!

スウェーデン情報

By:スウェーデン在住 大瀧昌之

スウェーデンという国は、平等社会であるということが世界的に評価されている国です。

もちろん、男性と女性は同権であることはいうまでもありませんが…
でも、まだまだ同権というにはいろいろ問題もあります。

何せスウェーデンには、「フェミニスト党」という政党があるくらいですから…。

今のスウェーデンでは、例えば同じ仕事をしていると、そこに男女の賃金差というものはありません。
いわゆる、「同一労働同一賃金」というものです。

でも、職種によっては、技術系の仕事などは男性が多いし、一方で福祉系の仕事では女性が多いなど、その職種によっては男性が多い場合や女性の方が多いという職種というものがあります。

例えば、男性が多い「レントゲン技師」と女性が多い「看護師」の教育の期間は同じ長さですが、やはりレントゲン技師の方が給与は高いですし、他にもそういう職種を探すといろいろあるでしょう。

これは、今になってもまだ男女間の不平等があると指摘される根拠でもありますが…

今日は、その原点ともなっている、スウェーデンでの男女の違いについて少し…

話は飛びますが…

だいぶ昔の話になりますけど、あの野球のイチロー選手が引退すると表明した後、ご夫婦で歩いている写真がニュースで流れたのを見た方は多いと思いますが、

奥さんが、イチロー選手の後ろから、3歩くらい後に歩いていて…それが、「女性らしい」という評判だったみたいですけど…
日本では、そういう「奥ゆかしさ」というものが、「女性らしさ」として評価されるんでしょうね。

スウェーデンでは「奥ゆかしい」という言葉もないですけど、それを「謙虚さ」といっても、それは女性らしさを表しているものにはならないと思います。

「らしさ」の話ですが…

僕がこっちに来たのは60年代も終わりの頃の話ですけど…
その時代はヒッピーの影響もあって、男と女の「らしさ」の違いをなくそうとしていた時代であったと思います。

男も女も、当然着るものに違いはあるけど、当時は「ユニセックス」というのが流行って、まず見た目から男と女の違いをなくそうみたいな…

男ってあまり服装で自己主張しないみたいですけど、
でも女性は、そこに自分の思想みたいのが表れるのか…

例えば、口紅なんてつけている人もいないし、ブラジャーなんてものもしないのが普通でした。
女らしさというものを消して、出さないっていうようにですかね…

スウェーデンは春が長いので、5月も中旬になって急に初夏のようになると、街中で有名な公園なんかには、それこそ100人以上の人が日光浴するんですが、その中の多くの女性はトップレスで、そういうのも当時は普通だったです。

いわゆるウーマンリブっていうのが盛んになってきた頃ですよね…
その頃は、男らしさとか女らしさというものは何か否定的な比較の仕方で、「男と女には、全く違いがない」というのがモットーでした。

70年代に入ると、デビット・ボウイとか男のスターが化粧をするようになって…今のビジュアル系に繋がっていったみたいでしたけど…

そんな若者の世代が親世代になると、子どもの育て方についても議論が起き、「男らしさとか女らしさとかは、環境と育児教育から始まる」というので、

まず、今まで男の子が好むと思われてきた青色系の洋服でなく赤色をとか…男の子に車の玩具、女の子に人形なんてとんでもない…みたいな議論が、教育の世界やいろんなことろで起きました。

家庭でも、男性も女性も仕事をしてるんで、主婦か主夫か知らないけど…家事は共同でやるのは当たり前になって…

でも、どうも男性と女性では食器洗いについて違いがあるようで…

女性は一般的に、食事が終わるとすぐに食器を洗って、それが終わってからゆっくりする…という傾向があるのに比べて、男性は一般的に、食事が終わるとテレビを見たりして、自分のやりたいことが終わってから「じゃ、洗い物でもするか…」ということで、お互いイライラして夫婦ゲンカになることが多いとか…

また、女子会なんかでは、如何に女性は男性よりも強いか…ということが話されることが多いとか…

一方で男性の間では、「女の場所は、やっぱりかまどの前だよな…」みたいな話を、人に聞こえないように話したり…なんてこともありました。

で、

やがてスウェーデンでは、「優しいパパ(Mjukispappa)」というのが流行語にもなって、男性は、「優しくて理解があってしかも家事に優れている」というのがモデルになってきました。

ところが、

その「優しいパパ」現象が、やがて…「近頃の男の子には、父親像がない」と批判されるようになって…

特に若者の暴力事件なんか起こると、「彼らには男性像がないから…」とネガティブな側面も議論されるようになって、女性らしさとか男性らしさというものの姿を、改めて話されるようになった時期もあります。

そんな風潮が少し変わってきたのは、どうも僕の感じでは…
あのマドンナが出てきて、「女であって、何が悪い!」みたいな主張をしてからというか…

そのマドンナが、腹が割れたマッチョ的な男性ダンサーに囲まれて、それはまたセクシーな仕草で挑発するみたいのが世の中の若い女性に受けて、なんか新しい女性像を作ったような気もするんですけど、どうですかね…

スウェーデンには同棲婚というのがあって、結婚してなくても、共同で生活しているというのが多く、今は、離婚の時でも相続の時でも結婚と同じように扱われます。

60年代からしばらくはその傾向が強かったんですけど、ところが最近では、また伝統的な結婚をするカップルも増えてきました。

それなんかも、あのマドンナが女性らしさを誇張して主張したのと同じ頃からですかね…

ちなみにですけど…スウェーデンでセクハラというと、60年代とか…昔は「男性が女性に嫌がらせをする」というのが多かったですけど、

最近は、例えば女性が多い保育園の職員の中で男性職員が疎外されるとか、男性の多い警察官の中で、女性警察官が差別される…というように、「性の違いによる差別」というのが多くなって、今ではスウェーデンでの「セクハラの定義」にもなっています。

スウェーデンでは、今まで女性らしさとか男性らしさというものを議論した時代が結構長かった気がしますけど…

今は、話さないまでも、お互いに同権で付き合うことで、それぞれの男らしさとか女らしさとかを、それぞれが探求している時代になったのかもしれませんね。

そう、

「男らしさ」とか「女らしさ」というものは社会や周りが決めることではなく、結局は個人的な思考と好みの問題で、人は、その人なりの「らしい人」を求めているんではないでしょうかね。

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